血の浄化と肝の気滞の改善で、Mさんは「女」がイヤでなくなった      トップに戻る

●病気と健康 ● 伝統医学で生理痛に克つ!!  第 12 回

 
   
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「血府逐お湯(けっぷちくおとう)」を構成する生薬群

まずは、具体的に「血府逐お湯(けっぷちくおとう)」を構成する生薬の効果効能をみていきましょう。

・血(けつ)を浄化し、養分をたっぷり含んだ本来の血(けつ)に戻す生薬群

Mさんは生理時の血量が比較的少ないこともあり、桃紅四物湯(とうこうしもつとう)<桃仁(とうにん)、紅花(こうか)、当帰(とうき)、生地黄(しょうじおう)、川きゅう(せんきゅう)、赤芍(せきしゃく)>が養血活血を目的として選ばれています。

  1. 桃仁(とうにん)
    桃の種(硬い核のなかにある種子)のことです。抗炎症作用鎮痛作用もあります。
  2. 紅花(こうか)
    「べにばな」のことです。抗炎症作用鎮痛作用もあります。
  3. 当帰(とうき)
    補血作用があります。また鎮痛作用消炎作用、さらに中枢神経系や循環器系への効果も期待できます。
  4. 生地黄(しょうじおう)
    乾燥した地黄(じおう)のこと。TCMでは新鮮な地黄(じおう)のことを鮮地黄(せんじおう)、乾燥したものを生地黄(しょうじおう)といいます。血(けつ)は体のすみずみまで熱も運びますが、お血(おけつ)の余分な熱をとる働きもあります。
  5. 川きゅう(せんきゅう)
    TCMでは当帰(とうき)とともに、産科、婦人科に欠かせない生薬です。止痛作用もあります。また、気(き)の滞りにも効果があります。
  6. 赤芍(せきしゃく)
    芍薬(しゃくやく)の根(外皮をつけたままのもの)のことです。お血(おけつ)の余分な熱をとってくれます。また、お血(おけつ)による痛みを鎮めます。

・お血(おけつ)を排出へと導き、養分たっぷりの鮮血の循環をうながす生薬

  1. 牛膝(ごしつ)
    子宮収縮作用腸管抑制作用降圧作用止痛作用が期待できます。また、他の生薬の効果を下半身へと導く働きがあります。したがって、生理時のお血(おけつ)の排出促進だけでなく、利尿や便通にも効果があります。また、上半身に滞ったお血(おけつ)を下半身へと導く働きもあります。
 
   
   
 

・気(き)の滞りを改善し、上半身に薬理効果をもたらす生薬

  1. 桔梗(ききょう)
     鎮痛抗炎症解熱作用などが期待できます。また、他の生薬の効果を上半身に導く働きがあります。心肺、脳などに作用し、気(き)の滞りを元から改善するのに役立つわけです。

・気(き)の滞りを改善し、本来の気(き)に戻す生薬群

Mさんの場合、ストレスによる肝(かん)の気滞(きたい)が顕著でした。肝機能が衰えているといってもいいでしょう。病気にはいたっていないのですが、肝(かん)に元気がありません。したがって、肝(かん)の気(き)の巡りをよくする「四逆散(しぎゃくさん)」<9)柴胡(さいこ)、10)枳殻(きこく)、11)炙甘草(しゃかんぞう)、そして桃紅四物湯でも紹介した6)赤芍(せきしゃく)>が加えられました。

  1. 柴胡(さいこ)
    肝臓障害に効果があります。解熱、抗炎症、抗アレルギー、抗腫瘍、抗ストレスなどの作用があります。自律神経の失調にも効果があります。
  2. 枳殻(きこく)
    ダイダイやカラタチ(中国中部の原産で、日本では唐からきた橘という意。日本では「枳殻」をカラタチとも読む)の成熟直前の果実のことです。気(き)の滞りを改善します。
  3. 炙甘草(しゃかんぞう)
    甘草(かんぞう)を炒ったものです。甘草(かんぞう)は清熱解毒作用といって余分な熱をとり、解毒の作用がありますが、炒ることによって気(き)を補う作用が強くなります。体内の気(き)の力=気力を増すといってもいいでしょう。元気(本来の気)にするわけです。また、甘草(かんぞう)は「百薬の毒を消し、諸薬を調和する」といわれ、他の生薬の刺激性や毒性を緩和し、調和する働きがあります。消炎、止痛作用もあります。

さて、気(き)の滞りをなくすことによって、オーケストラの指揮者・気(き)は、このフォーミュラからどのようなハーモニーを生みだしたのでしょうか。

各生薬を調和させる甘草(かんぞう)が、気(き)の働きを助ける

血(けつ)を浄化し、養分をたっぷり含んだ本来の血(けつ)に戻す生薬群である「桃紅四物湯(とうこうしもつとう)」を生理痛に有効に働かせるための役目を牛膝(ごしつ)が果たします。一方で、気(き)の滞りを改善し、本来の気(き)に戻すため、また肝(かん)の気(き)を改善するための生薬群「四逆散(しぎゃくさん)」を有効に働かせる役目を桔梗(ききょう)が果たします。

しかも、いろんな生薬が加わることによる不協和音を調和させ、かつ、いろんな生薬がまじわることによって表にでる各生薬の毒性を取り除く働きを甘草(かんぞう)がおこなうことで、オーケストラの指揮者である気(き)を助けています。

それぞれの生薬のもつ個性、効果効能の裏には人間にとって害になるものもたくさんあります。すべてのものには表と裏があるようなものです。効果効能があるには、それだけの害も含んでいることを先人は身をもって理解したのでしょう。 

したがって、効果を発揮させるだけではなく、毒を取り除くことも含めてフォーミュラは確立されてきたわけです。それも、ひとりひとりにあったフォーミュラとして。当然といえば当然ですが、現代医学でのそれは、まだまだピンポイントの効果優先主義で、体への害についてのフォーミュラ的対処は追いついていません。化学薬品の組み合わせによる弊害もまだまだわかっていないもののほうが多いのが実情です。

TCMをはじめとする伝統医学の特徴を一言でいえば、体にできるだけ負担をかけないように治療をしようとする、その考え方にあるといえます。病気を回復させるだけでなく、以前にも増して元気な体に戻すことを当然の治療目的としていることです。それにくらべ現代医学は、病気が治れば良いわけで、その多くは人間を元気にしているわけではありません。

 

   ★チェックポイント

  • 新鮮な血(けつ)に戻す「桃紅四物湯(とうこうしもつとう)」
  • 「桃紅四物湯(とうこうしもつとう)」を有効に働かせる牛膝(ごしつ)
  • 気(き)を元気にし、肝(かん)の気を改善する「四逆散(しぎゃくさん)」
  • 「四逆散(しぎゃくさん)」を有効に働かせる桔梗(ききょう)
  • 各生薬の不協和音を調和させ、かつ、毒性を取り除く甘草(かんぞう)

 

生理痛だけでなく、すべてのことにいえるのですが、人間を本来の元気な人間、人間らしい人間に戻すためには「木を診て森を診ず」では、本当の解決にはならないということです。

「木を診ることも大切ですが、林を診、森を診、山を診、地域を診、地方を診、国を診、地球を診、太陽系を診、宇宙を診、そして同じようにミクロを診、心までも診る」ことが、すべてにおいて必然なのです。TCMは、長い年月をかけて、そのことを治療に生かしてきました。

さて、Mさんですが、「血府逐お湯(けっぷちくおとう)」が功を奏し、最近では女性であることがイヤではなくなってきたそうですよ。

 
   
   
 

●次回予告●

第9〜10回でも紹介しましたが、TCMが考える生理痛の4タイプについて、もういちど整理したいと思います。

 

 
 

 

 

 

 

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