ブクリョウ
昔、「松の木小唄」という歌がありました。「まつ」には「松の木」ばかりでなく大好きなあなたを「待つ」という意味もあるんですよ、という歌詞のお座敷小唄でしたが、中高年の方はご存知だと思います。なにしろ東京オリンピックの翌年に大ヒットしましたから。
その頃わたくし小学生だったんですが、オリンピック終わっちゃったなぁと、まあいってみれば虚脱状態のなかでこの歌を聴いたものでした。東京オリンピックというのは戦後最大の国家的行事だったし、ワールドカップなんてめじゃないくらい世の中騒然と浮き足立っていましたからね。
と、まあ前置きが長くなってしまいましたが、じつはこの松の木の根っこに寄生する菌がブクリョウなんです。正確に言うと、アカマツを伐採した後、3、4年たった切り株の根っこに繁殖した菌。これをマツホドといいますが、この菌の生薬名がブクリョウというわけです。
菌というと、皆さん小さいんだろうなあと思うでしょ。ところが聞いてビックリ、見てビックリ!ピタリと止まるあなたのシャックリ! なな、なんと、中にはサッカーボールぐらいの大きさのものもあるんですぞ。性状はというと、白っぽくて無味無臭。
さらに、煎じた時が感動もの。ふつう生薬を煎じるとおどろおどろしい色になるものなんですがね。例えば、地黄なんか真っ黒だし、サンシシにいたっては毒々しいオレンジ色。それにひきかえブクリョウときたら透明で、じつにお上品なんですな。
実を言うと、わたくし清楚なお嬢様みたいなブクリョウの大ファンなんです。ブクリョウのブクは草かんむりに「伏」と書く。(漢字がパソコンになくて残念。)リョウは同じく草かんむりに令嬢の「令」。まさに「伏し目がちの御令嬢」。さらに、学名もPoria cocos とこれまたお上品。
このブクリョウ、利水剤(りすいざい)といって体に溜まった余分な水分をさばくエキスパートなんです。気を行(めぐ)らせて水を化す。つまり、血液循環を促進して利尿効果を高める名人と言っていいでしょう。
五苓散(ごれいさん)という漢方薬に入っていますが、浮腫(むくみ)なんかにとっても良く効きます。他にも、食欲不振やがんこな痰にもよく効くし、変わったところでは精神安定作用もあるんですぞ。
ブクリョウはサルノコシカケ科の生薬なんですが、同じサルノコシカケ科に猪苓、霊芝、コフキサルノコシカケなどがあります。そして、どれもがガンに効くと言われていて目下、研究中。わたくし将来の大化けを秘かに楽しみにしております。
ご注意
このコーナーは中医学の啓蒙が目的です。実際に症状でお困りの場合、あるいはここで取り上げた漢方薬を服用される場合は、必ず医師にご相談下さい。
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