半夏(はんげ)
えー、ここでお断りしておきたいんですが、わたくし生薬オタクといいますか、とにかく生薬にヒジョーに愛着がありますので、時に生薬を擬人化して「半夏ちゃん」などと口走ることもあるかと思いますが、べつに気がふれてしまったわけではありませんので身を引かずにご清聴をお願いいたします。
さて半夏ですが、これはカラスビシャクの球茎です。カラスビシャクは畑でよく見かける雑草ですが、薬用になりますので、農家の奥様たちが草取りの時に集めておいて薬屋さんに売るんですね。それがソコソコお小遣いになるということから「ヘソクリ」とも呼ばれるようです。
カラスビシャクは六月頃に花を咲かせますが、半夏の名前の由来はどうやら夏の半ばに花が咲くとか、あるいはその頃に採集するとか、どうもそのあたりにあるようですね。診療所では半夏のことをちょっとおしゃれにミスターハーフサマーと呼んでいます。
半夏には粘膜刺激という副作用があります。ですから、半夏を処方する時にはショウガを一緒に入れてこの刺激を消さなくてはなりません。ショウガは漢字で書くと生姜ですね。いつも半夏のそばに生姜が寄り添って周囲を刺激しないようにしている。まるで放言癖のある総理大臣とクールな官房長官。いいコンビです。
このコンビにブクリョウを加えたものを小半夏加ブクリョウ湯といい、吐き気や嘔吐の時にとっても良く効くんです。二日酔いの時にもバッチリおまかせください。さらに陳皮を加えると二陳湯となり、こちらは気管支炎でゼコゼコと痰の多い時なんかに効果抜群。ほかにも、厚朴と組み合わせると半夏厚朴湯に早変わり。プチ鬱の時なんかにいいですね。
陳皮(ちんぴ)
たった今出てきたばかりの陳皮のお話に移ります。陳皮とはみかんの皮を干したもの。えっ、そんなに身近なものが漢方なの? って、いつも皆さんビックリされます。でも、本当なんです。これからは皆さんきっとみかんの皮を捨てにくくなりますよ。実際、カロチンとビタミンCは果肉よりもずっと多いんですね。
陳皮の「陳」は古いという意味。古いものほど上物とされているんです。ちなみに古いほうが良品とされる生薬には、他にもキジツ、ゴシュユ、半夏、麻黄、狼毒などがあって、全部で六個あるのでこれらを六陳と呼ぶんですね。先ほど、二陳湯という漢方薬が出てきましたよね。 半夏と陳皮のふたつが「陳=上物」のグループなので「二陳からできている漢方薬」という意味で二陳湯と名付けられたわけです。
まあ、名前の話はそれくらいにして、どんな時に使われるかというと先ほどの半夏に似ていて、食欲不振や嘔吐、気管支がゼコゼコして痰が多い時なんですね。陳皮の作用はマイルドなので、他の生薬による胃の刺激を和らげたりもします。ですから、漢方薬としてばかりでなくて身近なところでは、ナント!七味唐辛子の中にも入っているんですよ。さらに、体を温めるタイプの生薬なので、お風呂にいれるととっても良いと思います。体が温まるし湯ざめしない。お肌の新陳代謝もバッチリ。お肌しっとり、色気ムンムン、彼氏ウットリ、玉の輿!てなわけで、日本の冬は、みかんを食べて、みかん風呂に入って、陳皮の漢方飲んで。いいですねえ。
街をゆき 子供の傍(わき)を通るとき 蜜柑(みかん)の香(か)せり 冬がまた来る 利玄
ご注意
このコーナーは中医学の啓蒙が目的です。実際に症状でお困りの場合、あるいはここで取り上げた漢方薬を服用される場合は、必ず医師にご相談下さい。
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