脾虚(ひきょ)の人が「ぼんやりとした頭痛とフラフラした感じ」を訴えたら、半夏ビャクジュツ天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)。これは漢方専門家の間では常識です。では、そのメカニズムを説明しましょう。
脾(ひ)は、消化吸収機能全般をさす用語です。この場合、単に胃腸だけでなく肝機能など栄養の代謝に関わる機能全般を意味していると考えて下さい。
ですから、脾虚とは、消化吸収機能プラス代謝機能が衰えていて、摂取した食物をエネルギーに転換したり、蛋白質などの栄養素を代謝できず筋肉や骨を作ることができない状態です。
食べるとすぐお腹が張ってしまうので食が進まない。せっかく食べても栄養分を吸収できない。エネルギーが摂取できないのでいつも疲れやすくて元気がない。蛋白質などの栄養素が不足するので体格はひょろひょろと痩せている。養命酒のCMに出てくるような人を想像するとわかりやすいでしょう。
さて、このような人がめまいや頭痛になった時、体のなかではどんな変化が起こっているのでしょうか。
メカニズム= 痰濁中阻(たんだくちゅうそ)
このわけのわからない四字熟語は、「脾虚(ひきょ)によって発生した痰濁(たんだく)が正常な体の働きを阻害してメマイが起こる」ということを意味しているのですが、痰濁の概念を理解しないとないと何がなんだかサッパリわかりません。
痰は狭義には現代医学の喀痰と同じですが、広義には「体内に発生した良からぬもの」を指します。たとえば、これが胃にやってくると吐き気を催しますし、心臓に迷い込めば動悸をひきおこしたり精神錯乱をおこしたり、手足にやって来れば四肢を麻痺させてしまう、というまあとんでもないやつです。
現代医学的な解釈が難しい概念の一つですが、とりあえず「体に害を及ぼす物質X」としておきましょう。現代的にいうとサブスタンスXとでもいいましょうか。
ともかく消化吸収機能が落ち、肝臓での代謝なども変調をきたすと、その結果としてサブスタンスXが体内に溜まります。それが気血の流れを阻害するために、つまり脳神経系の機能を傷害し代謝系を攪乱するためにメマイが起こるのです。
この病態を改善するには、サブスタンスXを発生させない、できてしまったものには活躍の場を与えず速やかに取り除く、これに尽きます。そこでこの処方。
半夏ビャクジュツ天麻湯(はんげ びゃくじゅつ てんまとう)
処方構成
半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、ブクリョウ、甘草(かんぞう)、
人参(にんじん)、ビャクジュツ、オウギ、タクシャ
ショウガ、麦芽(ばくが)、天麻(てんま)
構成生薬の働き
この処方はとにかく消化吸収機能を高める生薬がズラリと並んでいます。
半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、ブクリョウ、甘草(かんぞう)は、胃腸の働きを高め、水分代謝を改善し、サブスタンスXを発生しにくくさせます。
人参(にんじん)、ビャクジュツ、オウギ、タクシャは、消化吸収プラス代謝機能を高めるだけでなく、体にエネルギーを与えます。
ショウガは吐き気を抑え、麦芽(ばくが)は消化酵素として働きます。
そして取り除ききれなかったサブスタンスXから脳神経を守るのが、天麻(てんま)という秘薬なのです。これらの生薬については次回から詳しく説明したいと思います。では、本日はここまでにいたしましょう。
ご注意
このコーナーは中医学の啓蒙が目的です。実際に症状でお困りの場合、あるいはここで取り上げた漢方薬を服用される場合は、必ず医師にご相談下さい。
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