「慢性疲労」の、おもなフォーミュラ 6「慢性疲労」といっても、いろんなタイプがあります。人間が一人として同じ人がいないように、体質も症状も微妙に違いがあるものです。TCMでは、そうした違いをドクターがきちんと把握したうえで、フォーミュラを決定します。また、症状の変化にともなうフォーミュラの微調整も、細かくなされるのが特徴です。 一人一人の症状、改善具合に対応する伝統医学、それがTCMなのです。それだけに、ここでご紹介する6つのフォーミュラは、市販もされている一般的なものですが、けっして独断で、服用しないでください。必ずTCMドクター、あるいは漢方薬局に相談のうえ、処方してもらってください。あなたにあったフォーミュラであることが肝心です。
ここでは、「慢性疲労」に対しても、TCMではいくつものフォーミュラが4000年の歴史のなかで実績を残し、さらなる改善を重ねて今日でも活用されていることを理解してください。あなたのフォーミュラを決定するのはTCMドクターであり、漢方薬局の薬剤師です。信頼できるホームドクターがみつかることを期待しています。 ★疲労倦怠感が強い場合は「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」
- 症状例 : 食欲がないので三食きちんと食べることがない。外食は決まって残してしまう。休みの日などはテレビを見ながらなんとなくスナックを口にしている。食欲不振なのに、そんなときは結構暴飲暴食だったりする。結果的には胃腸が弱って、いつも下痢ぎみ。体に力が入らず、なにをやっても楽しめない。日一日と疲労感ばかりが強くなっていく……。人によっては胃下垂や子宮下垂、脱肛などの症状もある。
- フォーミュラ
: 黄耆(おうぎ)15g、人参(にんじん)10g、白朮(びゃくじゅつ)10g、陳皮(ちんぴ)6g、升麻(しょうま)3g、炙甘草(しゃかんぞう)5g、柴胡(さいこ)3g、当帰(とうき)10g、生姜(しょうきょう)3g、大棗(たいそう)3g
★食欲不振で、食べれば少量で胃がはるといった場合は「四君子湯(しくんしとう)」
- 症状例 : 食べたいとは思わない。それでも「食べなきゃ」と自分に言い聞かせてノド越しの良いものを食べるのだが、量はすすまず、すぐに胃がはる感じ。吐き気も時々襲ってくるので仕事にも集中できず、気力もない。顔に生気がなく、周囲からは「病弱な人」と思われている。「ホントはこんなヤワじゃないのに」って、鏡の自分に話しかける……。下痢とまではいかないが、便はかなり柔らかい。
- フォーミュラ
: 人参(にんじん)12g、白朮(びゃくじゅつ)9g、茯苓(ぶくりょう)9g、炙甘草(しゃかんぞう)5g、生姜(しょうきょう)1.5g、大棗(たいそう)1.5g
吐き気の程度が強い場合は別のフォーミュラが検討される。たとえば「六君子湯」。 ★体力、気力が衰えている場合にまず使うフォーミュラ。特に女性は、貧血や冷え症など女性特有の症状がある場合は「十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)」
- 症状例 : 貧血や冷え症に悩まされているうえ、生理まで不順。「あなたって、女性病の見本市ね」って、親しい友達からは同情されるくらい。当然、顔色も悪く、「疲労倦怠感がドッと背中に溢れている」とか。最近では、階段を10段ものぼると動悸がはげしくなって、ひと休み。ひとりでいると、何となく不安で仕方がない……。人によっては、微熱が続く場合もある。
- フォーミュラ
: 人参(にんじん)6g、白朮(びゃくじゅつ)6g、黄耆(おうぎ)9g、炙甘草(しゃかんぞう)3g、茯苓(ぶくりょう)6g、熟地黄(じゅくじおう)9g、当帰(とうき)6g、芍薬(しゃくやく)6g、川きゅう(せんきゅう)3g、肉桂(にっけい)3g
★疲れているのに眠れない場合は「帰脾湯(きひとう)」
- 症状例 : なかなか寝つけないうえに眠りが浅くて、うとうとしたかと思えば何かに怯えたようにハッと目が覚める。胸がドキドキしている。いろんな夢をみているようだけど、思い出せない。ドキドキの原因は別に怖い夢を見たからというわけではなさそうだけど、いつも不安な気持ちの寝起きがつらい。貧血ぎみだから顔色も悪く、寝起きの自分を鏡で見ると、ますます疲労倦怠感がつのってしまう……。
フォーミュラ
: 黄耆(おうぎ)12g、人参(にんじん)12g、白朮(びゃくじゅつ)9g、茯苓(ぶくりょう)10g、炙甘草(しゃかんぞう)5g、当帰(とうき)10g、竜眼肉(りゅうがんにく)10g、酸棗仁(さんそうにん)10g、遠志(おんじ)10g、木香(もっこう)5g、大棗(たいそう)3個、生姜(しょうが)6g ★眠れないだけでなく、常にイライラしている場合は「加味帰脾湯(かみきひとう)」
- 症状例 : 疲労も度を越すと怒りっぽくなってくるのか。些細なことですぐにキレてしまう。いつもキレたあとで「何で、あんなことでキレたのか?」、自分でもよくわからない。で、またくよくよと考えて、眠れない、疲れて仕事にならない、恋どころではない……。でも、キレる瞬間は、いつも「自分が正しい」と無意識に判定がくだっているのは何故か。ホントは「疲れているのだから、そっとしておいて!!」といいただけ!?
- フォーミュラ
: 黄耆(おうぎ)3g、人参(にんじん)3g、白朮(びゃくじゅつ)3g、茯苓(ぶくりょう)3g、炙甘草(しゃかんぞう)1g、遠志(おんじ)2g、大棗(たいそう)2g、当帰(とうき)2g、酸棗仁(さんそうにん)3g、竜眼肉(りゅうがんにく)3g、木香(もっこう)1g、生姜(しょうが)1g、柴胡(さいこ)3g、山梔子(さんしし)2g
★秋口の夏バテからくる慢性疲労などの場合は「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」
- 症状例 : 昨年の夏は恋もしたしで、大いに充実したのは良かったが、夏の終わりとともに恋も終わり、悲恋の歌詞のような秋から冬。そんな私の心が素直に体に反応したのか、いわゆる夏バテ。「病は気から」とは良くいったものだと、悲しいながらも納得していたら、春がきて、また夏がきて……。「そんなバカな、いまだに夏バテ?」。ノドが乾くので水をよく飲むせいか下痢ぎみの毎日、疲労倦怠感に悩まされ続けている。
- フォーミュラ
: 黄耆(おうぎ)3g、人参(にんじん)3.5g、蒼朮(そうじゅつ)3g、甘草(かんぞう)1g、陳皮(ちんぴ)3g、当帰(とうき)3g、麦門冬(ばくもんとう)3.5g、五味子(ごみし)1g、黄柏(おうばく)1g
「補気・益気」こそが、「慢性疲労」改善の第一手段!!今回紹介した6つのフォーミュラに共通していることは、いずれも「補気」あるいは「益気」をうながすということで共通しています。以前紹介したように 気(き)は、仮想的な物質ですが生体活動のエネルギーとなるものです。それはすなわち、免疫力といいかえることもできます この気(き)を補う、あるいは増やすことが「慢性疲労」では何よりもまず大切なことなのです。「補気・益気」を前提として、個々人の体質、症状ごとの細かなフォーミュラが組み立てられていきます。「慢性疲労」を「たかが疲れ」と思わないでください。ドクターにもまだまだそういった捕らえ方をする人がいることは、前述のNさんの例でもわかります。 免疫力のレベルで捕らえなくてはいけない症状が「慢性疲労」なのです。免疫力のレベルの問題ということは、「慢性疲労」だけの問題ですまなくなることも予想されます。「慢性疲労の自覚症状のある方は、少しでも早く、「補気・益気」の具体的な対策をこうじてください。まずは信頼できるTCMドクター、あるいは漢方薬局で相談してみることをお勧めいたします。 |