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「ハーブの風」

アトピー性皮膚炎:日常生活の注意

その5;温熱について
(これは、Dr赤ひげドットコムに連載したものです。)

アトピー性皮膚炎の悪化は、地球の温暖化が原因!?
体に熱をためすぎないで!!

家族で温泉、いいですね
でも、温熱効果には注意を

 最近のテレビでした。ロシアでの出来事です。真昼の空が急に暗くなったかと思う間もなく、バッタの大群が農作物に襲いかかり、情け容赦なく食べ尽くしています。あとには、わずかな茎や葉が残るだけ……。

 地球の温暖化現象が原因で、自然のバランスは少しずつ狂い始めているといわれます。バッタやイナゴの大量発生も、地球の温暖化、異常気象が起因しているようです。

 地球の温暖化については、1988年6月の米国議会上院議院・エネルギー天然資源委員会で、NASA(米航空宇宙局)のJ・ハンセン博士が、「温室効果」という表現で証言したのが最初でしょうか。

「温暖化は自然現象ではない。人間が自然を汚し、その秩序を乱す行為が引き起こしたものである。主な原因は二酸化炭素の増加である」

 と。本来、地球の表面が暖かいのは、二酸化炭素のおかげなんです。降りそそいだ日光が地表を暖めます。すると地表が熱(赤外線)を発するようになります。その熱は空気中の二酸化炭素と水蒸気が吸収して、大気圏外へ逃げ出さないように作用するのです。といっても、すべての赤外線(熱)が、二酸化炭素と水蒸気によって吸収されるわけではありません。赤外線の波長の一部はいずれにも吸収されず、大気圏外に放射され、それによって絶妙な温度バランスが保たれているのです。

 ところが、人間による大量の石炭や石油などの燃料消費が、そのバランスを狂わせているのです。自然が放出した二酸化炭素は植物や海など、自然が吸収してバランスがとられていたのですが、自然が吸収できないほどの二酸化炭素を人間が自然界にばらまいて、保温効果を高める結果、地球にダメージを与えているわけです。加えて、二酸化炭素を吸収してくれる森林の伐採などが輪をかけています。二酸化炭素以外にも保温効果のある気体が増えているのも気になります。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、お元気ですか。まだまだ残暑の厳しさが身に応えますね。日ざしもまだまだ厳しいものがあります。そこで、今回は、残暑にサヨナラするために、アトピー性皮膚炎(以後アトピーと略す)にとって悪玉=赤外線の「温熱」効果についての話です。地球の温暖化、二酸化炭素などの保温効果の高い気体の増加が、アトピーの肌にもダメージを与えているかどうか、そこまでは私もわかりませんが、前にもいったように、赤外線によって皮膚が温まることで、症状が悪化するケースは多いのです。

 ところで、夏の暑い盛りはアトピー改善に、なにはともあれ「水、みず、ミズー!!」と、水と仲良くすることお薦めしていましたよね。これからは、野に山に、温泉じゃあありませんか? いよいよ、子どもの元気に大人もつきあえる季節になった、ということでしょうかね。野山を散策したあとは、家族で露天風呂……。最高です!!

 ヨーロッパでは、古くから温泉水の治癒効果に注目し、最新医療にも取り入れられています。アトピーの治療についてもそうです。日本の医療では、まだ民間療法としてしか位置づけられていません。しかし、医療先進国が認めているほどですから、温泉の効果はバカにできないと私は思います。ただし、アトピーの患者さんは、赤外線同様に温泉のもつ「温熱」効果に注意してください。

「温める治療」「冷やす治療」
が、漢方の基本的な考え方

 東洋医学から説明しましょうか。この「温熱」つまり熱は、漢方では基本となる考え方です。病状を判断するとき、           

                            寒
「熱←→寒」「燥←→湿」の            ↑

ふたつを軸に考えます。         繰 ←   → 湿

 図で示すと、右のような関            ↓

係です。                       熱

 ここでは、理解しやすいように、「熱←→寒」の軸だけで説明します。

 漢方治療ではまず、望診(患者さんを観察する)、問診(患者さんへの質問)、聞診(患者さんの説明を聞く)、切診(脈をみたり、患者さんの体に直接触れてチェックする)を基本に診察をします。その結果で、患者さんの体の状態が「熱←→寒」の軸上、どのあたりに位置しているかを把握します(詳しくは「熱―温―平―涼―寒」に分類するのですが、簡略にします)。

 たとえば「寒」のほうに傾いていれば、温める方向で。「熱」のほうに傾いていれば、冷やす方向で、治療方針をたてます。

 アトピーで、赤みの強い湿疹の場合はどうでしょうか。先ほどの軸上、「熱」のほうにかなり傾いていると考えられますので、冷やす方向に治療を組み立てます。その逆、温める方向で治療をしてしまったら当然、悪化することになります。

 では「温める治療」「冷やす治療」とは、どういった治療をいうのでしょう。たとえば漢方で使う生薬は、すべて先ほどの軸上に分類されています。よく知られている朝鮮人参は軸のセンターより温の位置(温性)、アトピー治療によく使われる苦参は軸のセンターより寒の位置(寒性)といった具合です(正確には生薬それぞれで、センターからの位置関係は微妙に違って位置するのですが、ここでは無視して説明しています)。

 このような生薬を何種類も組み合わせて、ひとつの処方ができあがります。温める方向にもっていきたいときは、温性の生薬を多くします。冷やす方向にもっていきたいときには、寒性の生薬を多く配合することになります。

 ちょっと難しくなりましたかね。ようは、アトピーと赤外線や温泉などの熱とは、皮膚の症状を悪化させる関係にあるということなんです。

「温熱」は西洋医学でも
アトピーの悪化要因

 熱について、西洋医学での説明はこうです。

 人間の体温を調節しているおおもとは、脳の視床下部にあります。ここには相反する2つの調節センターがあります。寒くなったときに体温をあげる寒冷中枢(熱産生中枢ともいう)、暑いときに体温をさげる温熱中枢です。

 ・寒冷中枢=血管収縮、立毛、震えなどにより体温をあげる。

 ・温熱中枢=血管拡張、発汗などにより体温をさげる。

       寒冷中枢を抑制するかたちで働く。

 これらは、お互いにバランスを保ちながら働いています。通常は主に寒冷中枢が優位で、皮膚の血管を収縮させたり、鳥肌をたてたり、震えをおこさせたりして、体温調節をしたり、させたりします。

 ところが、たとえば夏の暑い日中などは、通常とは逆の方向の調節に切り替わります。つまり、温熱中枢が刺激をうけると、寒冷中枢の働きを抑えるとともに、血管拡張や発汗などの指令をだします。これが神経を伝わって皮膚にとどき、皮膚の血管をひろげて体内の熱を放出しやすくしたり、汗をだして、その蒸発熱で体温をさげたりします。

 実はこのとき、神経の先端から皮下にアセチルコリンという物質が放出されます。これがかゆみをおこす物質・ヒスタミンを刺激するため、かゆみがひどくなり皮疹が悪化するわけです。また血管が拡張するため、顔の赤みなどはひどくなります。

 詳しいメカニズムについては不明な部分も多いのですが、東洋医学的にみても、西洋医学的にみても、「温熱」はアトピーの悪化要因であることは、間違いありません。

 家族で野山を散策するときも、ゆったり楽しい温泉タイムも、アトピーの患者さんには、体に熱をため過ぎないよう工夫してあげてください。

 それにしても、「朝寝、朝酒、朝湯」が大好きだった小原庄助さんは、アトピーじゃなかったんでしょうねぇ……。ハハハ。

 次回は、飲み物、食べ物に関係した「温熱」のお話です。

 では、おだいじに!!