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恵明会クリニック
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アトピー性皮膚炎は多彩な顔を持っているアトピー性皮膚炎というのは、実に多彩な顔を持つ病気です。それはいろいろな意味でそう言えます。順番に説明しましょう。 まず、原因です。アトピー性皮膚炎の原因は、現在のところ不明ですが、医者や研究者の間でコンセンサスを得ている二大発症メカニズムは皮膚バリア機能の低下とアレルギーです。 さらにこれらは神経系や内分泌系などの影響を受けて様々に変化します。たとえば、生理の時に悪化する、仕事や人間関係のストレスで痒みが増す、睡眠不足で悪くなるなどですね。 ですから、アトピー性皮膚炎の患者さんがかかる診療科もたくさんあります。まずは皮膚科とアレルギー科。これはわかりますよね。 次には、内科と小児科。これも身近なお医者さんということでアトピー性皮膚炎の患者さんにとっては心強い味方ですね。 そして、私どものクリニックのような漢方のお医者さん。特に最近は、アトピー性皮膚炎を完治するには漢方で体質改善をすることがたいへん有効だということが少しずつですが理解され始めたようで、漢方科を受診する方が徐々に増えているようです。 最後に、心療内科と神経科。やはりアトピー性皮膚炎と精神的ストレスとは深い関係があるわけですから、これも納得です。 三番目の多様性は皮膚の変化です。湿疹があってジュクジュクする場合もあれば皮膚が粉をふいたようにカサカサに乾燥する場合もありますし、掻き傷だらけのこともあれば細菌感染を起こしていることもあります。さらには苔癬化といって象皮様に変化している皮膚もみられます。そして、それらが入り混じって実に多彩な皮膚病変になるんですね。 このような皮膚病変の分布についても様々です。顔と首だけのこともあれば、肘の裏・膝の裏に出ているだけということもありますし、全身に出ている場合もあります。 四番目はそれらの皮膚病変が年齢によって様々に変化するという時間的な多様性です。小学生の時には乾燥肌でカサカサしており肘と膝の裏だけ湿疹のあった人が、中学・高校生の頃いったん症状がまったくなくなり、大学入学や就職などをキッカケにして顔と首中心にジュクジュクした湿疹が出現する、と言った具合に年齢と共にアトピー性皮膚炎は様々に変化していきます。 さらにはステロイドでおさまる時期もあれば、ステロイドが怖くなって突然やめることにより全身性に極度に悪化する、いわゆるリバウンド状態の時期を過ごす方もおられます。
アトピーの漢方治療を始めたいきさつ
このようにアトピー性皮膚炎というのは多彩な顔を持っていますので、完治はもちろんのこと、症状のコントロールもなかなか大変です。 そんなアトピー性皮膚炎の漢方治療を始めてもう14,5年になるでしょうか。ずいぶん多くの患者さんの治療をしてきました。このへんで今までの研究や診療を振り返ってみるのも今後の治療に役立つのではないか。そして、それらを整理しながら皆さんにお話しすることにより、アトピー性皮膚炎のつらい症状に悩んでいる方々に対して、何らかの手助けをすることができるのではないか。そんな気持ちでこのコラムを書き始めました。まあ、肩の力を抜いて、自然体で書いていこうと思っています。 もともと私は脳神経内科の医師としてスタートしました。民間病院に勤めてからは、脳卒中とその後遺症、つまり片麻痺・失語症などを専門にしていました。ところが、このような症状は、ぱっと治る特効薬があるわけではありません。地道にリハビリテーションを続けるしかないのです。そんななかで、麻痺などの後遺症はすぐには治らなくても、患者さんの様々な自覚症状、たとえば体がだるくてしかたがないとか、冷え症だとか、そんな症状を取ってあげることが出来ないだろうかと考えました。そういった症状がなくなるだけで「生活の質」つまり「QOL」が改善するのではないか。そして、あれこれ調べているうちに漢方という分野があることを知り、勉強を始めたのです。これがまあ、私と漢方との出会いなのですが、やがて開業し、内科・皮膚科とともに漢方の診療をしていると、いつの間にかアトピー性皮膚炎の患者さんばかりになってしまいました。 以上が現在「アトピー性皮膚炎の漢方治療」をしているいきさつです。このあたりのことに関しては、また後ほどゆっくりとお話したいと思います。ちなみに、漢方といってもわたしの専門は「日本漢方」ではなくて、本場中国の漢方(これを「中医学」といいます)ですが。 ところで、診察中に患者さんの症状を見ているときに、ふっと子供の頃のつらい思い出が蘇ってくることがあります。じつは、わたしは小学生の頃、ひどい水虫に悩まされていました。小学生が水虫? と驚かれる方もいると思いますが、別に自分に原因があるわけではなくて、父親からうつされたわけなんですね。当時は日本もまだ発展途上国に毛が生えた程度の国でしたから、当然のことながら病気や衛生に対して皆さん無頓着でした。 父親は長靴をはいて仕事をしてましたので、頑固な水虫に悩まされておりました。そして、同じ屋根の下に暮らしていればうつされるのは時間の問題だったわけです。ある日とつぜん、わたしの足の指を尋常ではない痒みが襲いました。とにかく痒くて痒くてしょうがない。足の指を思い切りこすり合わせても痒みがおさまらない。ガマンできずに手でバリバリと掻きむしってもおさまらない。1時間ほどすると足の皮膚はペロンとむけて、クレーターのようにあちこちに粘膜が露出していました。そして、そのヒリヒリする痛みが最初の痒みにまさったところでようやく一息つきました。痒みが消えたというより、むしろ痛みと痒みがバランスをとって掻かなくてもすむようになった、という感じでしょうか。 それからはさんざんな毎日でした。授業の時は痒くても掻くわけにはいかないので、足の指を床に押し付けてみたり、もう片方の足で叩いてみたり。まあ、大変でしたね。自宅にいる時に痒くなると、容赦なくバリバリと掻きむしりました。あたりは、コナだらけ。そして、一面に臭いにおいがただよいます。皮膚科に行って軟膏ももらいましたが、当時はあまり効く薬はなかったようで、結局わたしの水虫は慢性化して大人になるまで続きました。 そんな強烈な水虫でしたが、痒みもさることながら、ぐちゃぐちゃになった足の皮膚はとても他人に見せられるものではありません。ですから、夏になって、プールの時とか林間学校でクラスの友達と入浴する時とかは恐怖でした。足を見られないようにいろいろと小細工をしたりもしました。でも、結局ばれてしまいましたけどね。あるクラスメートがわたしの足をじ〜っと見て「すごい足の指してるね」。この言葉は今でもトラウマになっています。 そんな思い出があるものですから、自分が今、アトピー性皮膚炎を専門にしているのがなにか因縁めいた感じがします。わたしがステロイドで一時しのぎの治療をせずに漢方で完治を目指す治療を始めたのも、そんなトラウマが関係しているんじゃないかと思っています。 つづく
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