更年期障害(その5)

●病気と健康 ● 連載 よそではきけない漢方の話 

 
  
 
   前のページ 目次 次のページ  
 
 

  

みなさんこんにちは。五月ももう終わりですね。爽やかな五月晴れのほとんどない五月でした。まあそれはともかく、今日も生薬のお話をいたしましょう。

 

甘草(かんぞう)

 

最後にスーパースターの登場です。なぜスーパースターかって? じつは甘草は殆どといっていいほど多くの漢方に配合されているからなんです。「百薬の毒を解す」と言われているように他の生薬の毒性を緩和して生薬同士の調和をすることができるためです。まあ、いってみれば漢方薬のコーディネーターというところでしょうか。

毒をとったり調和をはかったりという働きが、古代インドではとても評価されたらしく、お釈迦様の誕生日、つまり4月8日には甘草入りの水をお釈迦様の像にかけたそうです。それが日本に伝わって甘茶をかける習慣になったんですね。

西洋でも有名で、古代ギリシャのかのヒポクラテス大先生も使っていたとか。とにかく世界的に超有名な生薬なんです。

 

さて植物はマメ科の多年草ウラルカンゾウです。残念ながら日本には自生していません。その根をで用いれば解毒作用が強く、めて炙甘草(しゃかんぞう)にすると滋養作用が強くなります。

成分としてはグリチルリチンがこれまた超有名で、薬だけでなくドリンク剤からはてはクリーム・ローションに至るまでやたらと入っています。グリチルリチン配合なんていわれると使う前から治った気になるから不思議なもんですねぇ。

抗炎症作用・抗潰瘍作用・抗アレルギー作用、さらには肝臓の保護作用もあり、だからカンゾウ!などと寒いだじゃれも一発言ってみたいくらいに優秀なやつです。

のどが痛い時に甘草単独で使うこともあり、これがまた良く効きます。ただし、長期連用すると低カリウム血症、浮腫、高血圧になることがあるので要注意。どんな優秀なやつにも欠点はあるもんですな。

 

それから最後にもうひとつ。「甘い草」と言う字のとおりかなり甘いので、その甘味も甘味料から醤油の味付けに至るまで幅広く使われているんですが、わたくし個人的にはこの甘味は苦手です。漢方薬に入れると気持ち悪くなって、いっそのこと激ニガのほうがよっぽどマシなんて言う患者さんも大勢いるぐらいです。というところで今日はここまでにいたしましょう。

 

そうそう、パソコンの電源を切ろうかと思ったら、ものすごく大事なことを言い忘れたのに気が付きました。本日のメインイベント。

これは、わたくしの尊敬いたします大塚敬節先生がその著書「漢方の特質(創元社)」でおっしゃっていることなのですが、漢方生薬の本質を理解できると思いますので、かいつまんでおはなしします。

先生は甘草を例にとって、これに他の生薬を一種類加えるとどのように薬効が変化するかということについて、丁寧に説明なさっておられます。

まず甘草のみの場合、これを甘草湯(かんぞうとう)といい咽頭痛に良く効きます。

これに桂枝(けいし)という生薬(シナモンというとピンとくるんじゃないかと思いますが)を加えると、桂枝甘草湯(けいしかんぞうとう)という漢方薬になり、突然起こった動悸に効果があります。

また、甘草に芍薬(しゃくやく)を加えると芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という漢方薬になり、これは今までと全く違った薬効、つまり「こむらがえり(ふくらはぎがつること)」を治す漢方薬となるのです。

ほかにも例えば、大黄(だいおう)を加えると便秘に著効を示す大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)になったりと、とにかく一種類加えるだけで全く薬効の違う漢方薬になります。

これは現代医学の薬ではまず考えられないことで、わたくし漢方の勉強を始めた頃この本を読んでいたく感激したんですね。漢方薬と現代医学の薬の本質的な違いはこのことにあり、詳しく説明したいのですが、本日は時間がきてしまいましたので、後日このシリーズのなかで詳しくお話します。

というところでホントに今日はここまでにいたしましょう。次回は「めまい」の二回目に戻ります。お楽しみに。

 

 

ご注意

このコーナーは中医学の啓蒙が目的です。実際に症状でお困りの場合、あるいはここで取り上げた漢方薬を服用される場合は、必ず医師にご相談下さい。

 

 

 
      前のページ 目次 次のページ      
  
 
 

※無断複製・転載・放送等はお断りいたします