美容的マンカン全席のレシピに酔う      トップに戻る

●美容とダイエット ● 筏丸けいこの突撃レポート「悠久の美を求めて」  第 2 回
 
     

 

 

 

 

 

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中国伝統医学の美容法

中国伝統医学に美容学・美容法があることを知った私は、東京神田神保町にある東方書店にでかけた。ここは中国書籍の専門店だ。中国語はわからないけど、漢字はわかる。2階の医学書コーナーで、獲物をねらうハンターのような眼をして棚をみつめること1時間あまり。ようやく「美容」の2文字をみつけた。

 

書名は『后妃美容術』。中国宮廷の皇后や妃の美容術について書かれた本らしい。うすい本だけど、写真入りで、におう、におう、きっと、美しくなる秘訣が書かれているのだろう。ついでに1階で初心者用の中国語辞典も購入した。うれしくってbeat on my belly. 帰りのお茶ノ水駅までの上りの坂道など、なんのその。ウサギのダンスのように、ぴょんぴょん、跳ねていたのだった。

 
   
   
 

中国の医学といえば不老長寿という考え方がある。中国料理に、高級でめずらしい食材をつかった料理を2日も3日もつづけて食べるスタイル・満漢全席(まんかんぜんせき)があるが、食べ物をとおして健康を維持し、不老長寿を図るというものだ。亀や象の鼻、毒蛇なども食べたらしい。皇帝は不老長寿をもとめ、同時に、皇后、妃の皆々様は、最高級のお手入れをしていたというわけだ。 

『后妃美容術』の巻頭グラビアは、大清国の皇太后の油絵像である。いくつのときか不明だけれど、なるほど、肌は白いし、いかにもピーンとハリがある美女である。いわゆる絢爛豪華な美肌ってかんじだ。装飾をちりばめた手首や手の甲もしっとり美しい。そのほかにも、きれいな石がころころ転がるハンド・マッサージ器(きっとこれで顔をマッサージしたんだわ)、象牙の取っ手のついた手鏡(鏡よ、鏡、世界でいちばん美しいのは・・・)、紫檀と青磁をほどこした洗面器(そばには絹の布をもった官女がいたんだろうなあ)、象牙のクリーム容器など。けっこうな調度品ですこと。

こういったものに囲まれ、いったいどのようなお手入れをしていたというのだ(怒!)。

 
   
   
 

ページをパラパラめくって驚いた。漢方の生薬らしい植物の名前がじゃんじゃん書かれているではないか。それもあまりきいたことがない名前ばかりだ。生薬はヨーロッパ風にいえばドライハーブのこと。毎日これで顔を洗いなさい! 夜寝る前にこれを顔にぬりなさい! 皇太后はこれを使用して深くお喜びになりました! こうすればこまかいシワがなくなりますよ! 中年以後は皮膚もごわごわ弾力もなくなり・・・シミ、ソバカス、シワ、ニキビ、色白、うるおい、かぐわしいお肌、しっとり、光りかがやき、黒ずみもなくなります、などなど。これって中国伝統医学の美容法?! なにやらクリームやクレンジング剤のつくり方が書かれている。漢字ばかりの迫力なのか、中国4000年のご威光なのか、最高級のお料理・満漢全席のメニューみたいな美容レシピの入り口に立っている実感に、私はメロメロとむせび泣く。

 

清の時代をさかのぼること1000年、あの楊貴妃の美容法もあるというし、歴代中国ではほんとうに高貴な方々によって、さまざまな美容術が尊ばれ、研究され、うけつがれていたのだった。

いまでこそ漢方生薬配合の化粧品が売られているが、中国伝統医学の美容術にもとづいて、本家本元、漢方生薬だけで化粧品つくりをしたという恵明会クリニック院長の山口氏に、さっそく、どのような材料をつかって、どのようにつくったのかを伺おう(まさか驚きの体験談がまっていようとは・・・!?)。

つづく

 

 

 

 

 
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●筏丸けいこ:プロフィール

詩人。1980年代前半から詩をかきはじめる。いっぽうで寄席演芸や大道芸が好きで、「人間ポンプ」「人間美術館」など多数の芸人の取材をする。数年前に健康雑誌で美容取材をしたのがきっかけで、天然の素材をつかった美容に開眼。現在、料理をつくるようにキッチンでクリームやローションをつくっている。また東京都足立区のライブハウスyukotopiaで、マンスリーでさまざまな音楽とのポエトリー・リーディングをしている。詩集『再婚譚とめさん』『あかいパラソルをさしたフランケンシュタイン』『パプリカ・ブリーカー』(ともに思潮社)、著書に『いつもお祭り気分 幇間の世界』(亜紀書房)、『かなしいときは ほかほかごはん』(大和出版)、『試してよかった! 自然美容法』『自然美容法 ここがポイント!』(ともに筑摩書房)など。


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